特定技能ビザ申請・ビルクリーニング分野のポイント

ビルクリーニング分野の特定技能ビザの背景

ビルクリーニング分野については、単純労働にあたるとして、入管はもともと就労ビザは認めていませんでした。

ただ、この分野では人材不足が深刻化しており、以前から生産性の向上や国内人材の確保の取組として、ロボット化の普及促進や高齢者・若年者雇用の推進、賃金引上げに向けた方策に取り組んできました。

①生産性向上のための取組

生産性向上のための取組として、平成 29 年度の公益社団法人全国ビルメンテナンス協会の調査によると、約6割の企業がロボット導入に前向きな意向を示しており、ビルクリーニング業者、メーカー、ビルオーナー等が連携して協議会を開催し、清掃機械の開発、業務用清掃ロボットの性能の検証やその導入促進に向けた検討を急速に進めているほか、出勤状況をオンラインで把握する等の業務管理の効率化を図るIT化を進めている。

②国内人材確保のための取組

厚生労働省の産業別高齢者雇用推進事業により、公益社団法人全国ビルメンテナンス協会において「ビルメンテナンス業高齢者雇用推進ガイドライン」を策定し、同ガイドラインに基づく取組により業界の高齢者雇用を推進している。平成 27 年国勢調査によると、ビル・建物清掃員の職種においては、従業者のうち 65 歳以上の高齢者が 37.2 %を占めています。

そして、若年者雇用の取組としては、平成 28 年に、技能検定の対象であるビルクリーニグ技能士について、単一等級から複数等級に制度変更することにより、技能レベルを段階ごとに確認できるようにし、経験年数が少ない若者が、自分の技能レベルを確認しつつ意欲をもって業務に従事できるような環境を整備している。

また、賃金引上げに向けた方策として、厚生労働省において「ビルメンテナンス業務に係る発注関係事務の運用に関するガイドライン」を策定し、ビルメンテナンス業者が品質確保の担い手を中長期的に育成・確保するための適正な利潤を確保できるよう、国や地方公共団体等に対して、最新の労務単価等を的確に反映した積算を行うなど、適正な発注をするよう働きかけている。同ガイドライン発出後は、平
成 27 年度から平成 30 年度にかけて全国9か所 18 回にわたり発注担当者に対するセミナーを開催し、同ガイドラインの周知徹底を図っている。

しかし、表向きはともかく、実質的にはビルクリーニング分野において人手不足は深刻化していきました。

そこで、深刻化する人手不足に対応するため、技能実習の対象分野に加わりました。

さらにそれでも人手不足が深刻なため、今回、特定技能ビザの在留資格の該当分野に指定されました。

今後は、技能実習生だけでなく、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、本分野の存続・発展を継続し、経済・社会基盤の持続可能性を維持することが期待されます。

 

特定技能ビザ受入れの必要性について

ビルクリーニング分野については、「建築物における衛生的環境の確保に関する法律」(昭和 45 年法律第 20 号。以下「建築物衛生法」という。)の適用対象となる特定建築物が年々増加する中で、ビル・建物清掃員の有効求人倍率は近年高い水準で推移し、平成 29 年度には 2.95 倍に達しており、人材の確保が困難な状況となっています。

平成 27 年国勢調査によると、ビル・建物清掃員の職種においては、従業者のうち女性が 70.9 %を、65 歳以上の高齢者が 37.2 %を占めているなど、従前より、女性、高齢者を積極的に雇用しているが、近年の人手不足に鑑み、女性や高齢者が他分野で就労機会を多く得られるようになったためビルクリーニング分野を希望しなくなったことにより、人手不足が加速化していると考えられます。

人手不足によりビルクリーニング業務が適切に行われなくなれば、建築物の衛生状態が悪化し、利用者の健康が損なわれるおそれがあることから、その防止のために、特定技能外国人の受入れが必要である。

また、ビル・建物清掃員の平成 29 年度の地域ブロック単位の有効求人倍率は、最も高い中国地方が 3.80 倍、最も低い東北地方が 2.03 倍であり、全国的に人手不足が深刻な状況であることから、特定技能ビザでの外国人の受入れが急務となっています。

特定技能ビザでの外国人受入れ見込数について

ビルクリーニング分野における向こう5年間の受入れ見込数は、最大3万 7,000人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用する。

政府としては、向こう5年間で9万人程度の人手不足が見込まれる中、今般の受入れは、毎年1%程度(5年間で4万人程度)の生産性向上及び追加的な国内人材の確保(5年間で1万 3,000 人程度)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け入れるものであり、過大な受入れ数とはなっていないという見解です。

 

ビルクリーニング分野の特定技能ビザ取得の条件

ビルクリーニング分野において特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人は、以下に定める試験に合格した者又はビルクリーニング分野の第2号技能実習を修了した
者となります。

(1)技能水準(試験区分)

「ビルクリーニング分野特定技能1号評価試験」

(2)日本語能力水準

「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」

4 法第7条の2第3項及び第4項(これらの規定を同条第5項において準用する場合を含む。)の規定による同条第1項に規定する在留資格認定証明書の交付の停止の措置又は交付の再開の措置に関する事項

(1)厚生労働大臣は、有効求人倍率等の公的統計等の客観的指標等を踏まえ、人手不足の状況の変化に応じて運用方針の見直しの検討・発議等の所要の対応を行うとともに、上記2(4)に掲げた向こう5年間の受入れ見込数を超えることが見込まれる場合には、法務大臣に対し、受入れの停止の措置を求める。

(2)受入れの停止の措置を講じた場合において、当該受入れ分野において再び人材の確保を図る必要性が生じた場合には、厚生労働大臣は、法務大臣に対し、受入れの再開の措置を求める。

5 その他特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項

(1)1号特定技能外国人が従事する業務

建築物内部の清掃

(2)特定技能所属機関に対して特に課す条件

ア 特定技能所属機関は、都道府県知事より、建築物衛生法第 12 条の2第1項第1号に規定する建築物清掃業又は同項第8号に規定する建築物環境衛生総合管理業の登録を受けていること。
イ 特定技能所属機関は、厚生労働省が設置する、ビルクリーニング分野の業界団体、試験実施主体、制度関係機関その他の関係者で構成する「ビルクリーニング分野特定技能協議会(仮称)」(以下「協議会」という。)の構成員になること。
ウ 特定技能所属機関は、協議会に対し、必要な協力を行うこと。
エ 特定技能所属機関は、厚生労働省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと。

(3)特定技能外国人の雇用形態

直接雇用に限る。

(4)治安への影響を踏まえて講じる措置

厚生労働省は、基本方針を踏まえつつ、所掌事務を通じて治安上の問題となり得る事項を把握するために必要な措置を講じるとともに、把握した事項について制度関係機関と適切に共有する。

また、深刻な治安上の影響が生じるおそれがあると認める場合には、基本方針を踏まえつつ、厚生労働省及び制度関係機関において、共同して所要の検討を行い、運用方針の変更を含め、必要な措置を講じる。

(5)特定技能外国人が大都市圏その他の特定の地域に過度に集中して就労することとならないようにするために必要な措置

厚生労働大臣は、ビルクリーニング分野において各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるよう、制度の基本的な仕組みや地域における登録支援機関情報の周知等を、特に人材不足が深刻な地域に重点化して、業界団体とも連携して実施する。また、厚生労働省は、地域的な人手不足の状況について、地域別の有効求人倍率等による定期的な把握を行うとともに、業界内において取組の地域差が生まれないよう、得た情報のほか、本制度の趣旨や優良事例を全国的に周知することを含め、必要な措置を講じることによって、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるよう図っていく。