素形材産業分野において特定技能ビザが導入された背景

素形材産業分野については、単純労働にあたるとして、入管はもともと就労ビザは認めていませんでした。

ただ、この分野では人材不足が深刻化しており、生産性向上や国内人材確保のための取組等を従来から行ってきました。

①生産性向上のための取組

各企業や業界では、①生産現場の改善の徹底や、②研修・セミナー等、人材育成の継続的な取組を実施している。

また、経済産業省としても、企業による設備投資やIT導入を支援する施策により、企業による生産性向上の取組を支援している。

素形材産業分野を含む製造業の生産性は、平成 24 年から平成 28 年まで、年平均約2%向上している(推計値)。

②国内人材確保のための取組

各企業や業界では、①適正取引の推進等による適正な賃金水準の確保や、②女性や高齢者も働きやすい現場環境の改善等に取り組んでいる。

また、経済産業省としても、①中小企業が女性、高齢者等多様な人材を活用する好事例をまとめた「人手不足ガイドライン」の普及、②賃上げに積極的な企業への税制支援、③下請等中小企業の取引改善に向けた取組等を行い、企業による国内人材確保の取組を促進している。

素形材産業分野の就業者に占める女性及び 60 歳以上の者の比率は、平成 24 年には約 25 %だったが、平成 29 年には約 27 %に上昇している(推計値)。

しかし、実質的には素形材産業分野において人手不足は深刻化していきました。

そこで、表向きはともかく、実質的には深刻化する人手不足に対応するため、技能実習の対象分野に加わりました。

さらにそれでも人手不足が深刻なため、今回、特定技能ビザの在留資格の該当分野に指定されました。

今後は、技能実習生だけでなく、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、本分野の存続・発展を継続し、経済・社会基盤の持続可能性を維持することが期待されます。

素形材分野での外国人受入れの必要性

素形材部品に対する需要が高まる中、平成 29 年度の人手不足数は、素形材産業に関連する有効求人数と有効求職者数の差から3万人であり、5年後には、年2%程度と予測される素形材需要の拡大とこれに伴う労働需要の拡大が続くと、6万 2,000人の人手不足が生じるものと推計している。

素形材産業分野に関連する職業分類における有効求人倍率(平成 29 年度)は 2.83倍となっており、当該分野に係る職種における有効求人倍率(平成 29 年度)は、例えば、鋳物製造工 3.82 倍、鍛造工 4.32 倍、金属プレス工 2.97 倍となっている等、深刻な人手不足の状況にある。

今後も素形材産業分野で必要となる労働力は増加するものと見込まれ、これら要因による人手不足が早急に改善できる見通しは立っていない。

また、素形材産業分野は、地域における雇用創出に貢献しているが、地域ごとに人手不足の状況が異なる点に留意することは必要である。

素形材産業分野は、様々な金属部品を製造・供給する等我が国製造業の根幹を担っており、我が国の国民生活に不可欠な分野であるところ、素形材産業の持続的な発展を図るためには、素形材産業について基本的な知識・技能を有し、現場の状況に応じて作業手順を自ら考え作業を実施することができる即戦力の外国人を受け入れることが、当該分野の基盤を維持し、今後も発展させていくために必要不可欠で
ある。

 

素形材産業分野での特定技能ビザ・外国人受入れ見込数

素形材産業分野における向こう5年間の受入れ見込数は、最大2万 1,500 人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用する。

向こう5年間で6万 2,000 人程度の人手不足が見込まれる中、今般の受入れは、毎年1%程度の労働効率化(5年間で3万人程度)による生産性向上及び追加的な国内人材の確保(5年間で1万人~1万 5,000 人程度)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け入れるものであり、過大な受入れ数とはなっていない。

 

素形材産業分野の特定技能ビザ取得の基準

素形材産業分野において特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人は、以下に定める試験に合格した者又は素形材産業分野の第2号技能実習を修了した者とする。

なお、素形材産業分野、産業機械製造業分野、電気・電子情報関連産業分野の3分野においては、製造現場で従事する業務の多くが共通していることから、技能水準及び評価方法等を統一し、「製造分野特定技能1号評価試験(仮称)」として共通の評価試験を実施する。

(1)技能水準(試験区分)

(2)日本語能力水準

日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」

 

その他特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項

(1)1号特定技能外国人が従事する業務

1号特定技能外国人が従事する業務区分は、上記3(1)に定める試験区分に対応し、別表b.業務区分(5(1)関係)の欄に掲げる業務とする。

(2)特定技能所属機関に対して特に課す条件

ア 特定技能所属機関は、「製造業外国人材受入れ協議会(仮称)」(以下「協議会」という。)の構成員になること。

イ 特定技能所属機関は、協議会が行う一般的な指導、報告の徴収、資料の要求、意見の報告又は現地調査等その他に対し、必要な協力を行うこと。

(3)特定技能外国人の雇用形態

直接雇用に限る。