特定技能ビザ「介護」申請の注意点

特定技能1号「介護」は在留資格「介護」へ変更可能

特定技能1号「介護」は特定技能2号の対象職種にはなっていません。

したがって、特定技能1号「介護」の在留資格で永住ビザを直接申請することはできません。

当初は、介護分野は特定技能1号のみで、特定技能2号は認めないとされてきました。

理由は、先にも述べたように、介護に関しては、現在、在留資格「介護」があり、在留資格「介護」は介護福祉士の資格取得が必要になっています。

ですから、在留資格「介護」で10年以上日本に在留していれば、永住許可申請が可能だからです。

そこで、「介護」の特定技能ビザの外国人は、特定技能1号として、介護の仕事を3年以上続けた後に、介護福祉士の資格を取れば、既存の在留資格「介護」(介護ビザ)に移行できるということです。

以上より、外国人としては、「介護」の特定技能1号で入国し、仕事をしながら、介護福祉士に合格し、在留資格「介護」への在留資格変更を目指すことになります。

そして、在留期間が10年以上となった段階で、永住許可申請を行う、ということになるでしょう。

 

特定技能ビザで訪問介護はできない

特定技能ビザでは、介護施設内での入浴や食事などの補助的な業務が対象とされています。 介護施設の外に出て働く訪問介護は対象外となる予定です。

これは、訪問介護は個人宅に直接出向いて、独立して業務を行うことから、雇用会社の管理が行き届かないことを懸念したためです。

また、外注や丸投げを防止するためでもあります。

「特定技能」の在留資格は「介護」を対象とはしていますが、すべての業種でOKというわけではなく、介護施設内での入浴や食事などの補助的な業務が対象とされていることに注意が必要です。

「介護」分野の特定技能ビザの指針

平成30年12月25日には、「介護」分野の特定技能ビザについて、指針が発表されました。

以下で、それを説明します。

(1)特定技能外国人受入れの趣旨・目的

介護分野において深刻化する人手不足に対応するため、専門性・技能を生かした業務に即戦力として従事する外国人を受け入れることで、本分野の存続・発展を図り、もって我が国の経済・社会基盤の持続可能性を維持する。

→「即戦力として従事する外国人」ですから、ある程度の専門性、日本語能力は必要となります。

(2)生産性向上や国内人材確保のための取組等

介護人材確保に向けては、介護人材の処遇改善に加え、多様な人材の確保・育成、離職防止・定着促進・生産性向上、介護職の魅力向上等、総合的な取組を進めており、2014年から2016年までにかけて、対前年比で平均6万人程度増加している。

(処遇改善)

介護人材の処遇改善については、これまでの合計で月額5万7,000円の改善に加え、2019年10月からは、「新しい経済政策パッケージ」(2017年12月9日閣議決定)に基づき、介護サービス事業所における勤続年数10年以上の介護福祉士に月額平均8万円相当の処遇改善を行うことを算定根拠に、公費1,000億円程度を投じ、更なる処遇改善を行い、他産業と遜色のない賃金水準を目指している。

→これを機に、日本人の介護人材の処遇もよりよくなっていくことも願っています。

(生産性向上のための取組)

生産性向上のための取組については、介護ロボットやICTの活用による業務負担の軽減や職場環境の改善に引き続き取り組んでいるほか、組織マネジメント改革を推進するための「生産性向上ガイドライン」の策定を進めている。

(国内人材確保のための取組)

国内人材確保については、上記に加え、介護分野へのアクティブシニア等の参入を促すための「入門的研修」の普及、介護福祉士を目指す学生への返済免除付きの奨学金制度の拡充、介護に関する魅力の発信等、介護人材確保に向けた取組を総合的に進めている。

(3)受入れの必要性(人手不足の状況を判断するための客観的指標を含む。)

介護分野の有効求人倍率は、近年一貫して上昇を続けており、2017年度においては3.64倍と、全平均の1.54倍と比較し、2ポイント以上高い水準にある。また、地域によって高齢化の状況等は異なっており、都道府県別の介護分野の有効求人倍率は、全都道府県においておおむね2倍以上の状況にある。
こうした状況の中、第7期介護保険事業計画に基づく介護人材の必要数の推計(2018年5月21日厚生労働省公表)では、2016年時点における人材数である約190万人に加え、2020年度末までには約26万人、2025年度末までには約55万人を追加で確保することが必要とされており、今後、年間平均6万人程度を確保していく必要がある。

介護人材確保に向けた総合的な取組を通じ、2014年から2016年までにかけては、対前年比で平均6万人程度増加しているが、近年増加数が減少傾向にあることに加え、今後、生産年齢人口が一層減少していくこと等も見込まれる中、年間平均6万人程度の国内介護人材の確保を引き続き進めていくことは困難な状況にある。

こうした状況を踏まえ、介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき、利用者の心身の状況に応じた介護を自ら一定程度実践できる即戦力の外国人を受け入れ、利用者が安心して必要なサービスを受けられる体制の確保を図ることが、高齢化の進展等に伴い、増大を続ける介護サービス需要に適切に対応するために必要不可欠である。

(4)受入れ見込数

介護分野における向こう5年間の受入れ見込数は、最大6万人であり、これを向こう5年間の受入れの上限として運用する。
向こう5年間で 30 万人程度の人手不足が見込まれる中、今般の受入れは、介護ロボット、ICTの活用等による5年間で1%程度(2万人程度)の生産性向上及び処遇改善や高齢者、女性の就業促進等による追加的な国内人材の確保(22~23万人)を行ってもなお不足すると見込まれる数を上限として受け入れるものであり、過大な受入れ数とはなっていない。

3 特定産業分野において求められる人材の基準に関する事項

介護分野において特定技能1号の在留資格で受け入れる外国人は、以下に定める試験等に合格等した者又は介護分野の第2号技能実習を修了した者とする。

(1)技能水準(試験区分)

ア 「介護技能評価試験(仮称)」

イ アに掲げる試験の合格と同等以上の水準と認められるもの

(2)日本語能力水準

ア 「日本語能力判定テスト(仮称)」又は「日本語能力試験(N4以上)」に加え、「介護日本語評価試験(仮称)」

イ アに掲げる試験の合格と同等以上の水準と認められるもの

 

→日本語能力試験については、介護はかなり日本語力は必要なので、N3以上を要求するかも、と思いましたが、N4以上で落ち着くようですね。ただ、さらに「介護日本語評価試験(仮称)」で、介護用に特殊な日本語の習得ができているかを見るようです。

4 法第7条の2第3項及び第4項(これらの規定を同条第5項において準用する場合を含む。)の規定による同条第1項に規定する在留資格認定証明書の交付の停止の措置又は交付の再開の措置に関する事項

(1)厚生労働大臣は、有効求人倍率等の公的統計等の客観的指標等を踏まえ、人手不足の状況の変化に応じて運用方針の見直しの検討・発議等の所要の対応を行うとともに、上記2(4)に掲げた向こう5年間の受入れ見込数を超えることが見込まれる場合には、法務大臣に対し、受入れの停止の措置を求める。

(2)受入れの停止の措置を講じた場合において、当該受入れ分野において再び人材の確保を図る必要性が生じた場合には、厚生労働大臣は、法務大臣に対し、受入れの再開の措置を求める。

5 その他特定技能の在留資格に係る制度の運用に関する重要事項

(1)1号特定技能外国人が従事する業務

身体介護等(利用者の心身の状況に応じた入浴、食事、排せつの介助等)のほか、これに付随する支援業務(レクリエーションの実施、機能訓練の補助等)とし、訪問介護等の訪問系サービスにおける業務は対象としない。

→介護に従事できるのは、いわゆる所内業務に限られ、訪問介護等の訪問系サービスにおける業務は対象としないことに注意が必要です。

(2)特定技能所属機関に対して特に課す条件

ア 事業所で受け入れることができる1号特定技能外国人は、事業所単位で、日本人等の常勤介護職員の総数を上限とすること。

→事業所に常勤介護職員が10人ですと理論上は1号特定技能外国人も10人まで受け入れ可能ということです。外国人技能実習の場合は、原則10%までですので、かなり多いといえますね。ただ、理論上は可能でも、上記のような受け入れ方では通常はオペレーションを回すのは難しいでしょうから、通常は常勤10人に対し、2,3人ぐらいが限度ではないでしょうか。

イ 特定技能所属機関は、厚生労働省が組織する「介護分野特定技能協議会(仮称)」(以下「協議会」という。)の構成員になること。
ウ 特定技能所属機関は、協議会に対し、必要な協力を行うこと。
エ 特定技能所属機関は、厚生労働省又はその委託を受けた者が行う調査又は指導に対し、必要な協力を行うこと。

→「介護分野特定技能協議会(仮称)」って何をするんでしょうか。天下り機関の匂いがプンプンするんですが。。。「協力」の内容も気になりますね。

(3)特定技能外国人の雇用形態

直接雇用に限る。

→業務委託や外注はできません。

(4)治安への影響を踏まえて講じる措置

厚生労働省は、基本方針を踏まえつつ、所掌事務を通じて治安上の問題となり得る事項を把握するために必要な措置を講じるとともに、把握した事項について制度関係機関と適切に共有する。

また、深刻な治安上の影響が生じるおそれがあると認める場合には、基本方針を踏まえつつ、厚生労働省及び制度関係機関において、共同して所要の検討を行い、運用方針の変更を含め、必要な措置を講じる。

(5)特定技能外国人が大都市圏その他の特定の地域に過度に集中して就労することとならないようにするために必要な措置

国において、地域医療介護総合確保基金を活用し、「参入促進」、「資質の向上」、「労働環境・処遇の改善」等、地域の実情に応じ都道府県が実施する介護人材確保の取組を支援する。

また、厚生労働省は、本制度の趣旨や優良事例を全国的に周知するとともに、地方における人手不足の状況について、地域別の有効求人倍率等による定期的な把握
を行い、必要な措置を講じることによって、各地域の事業者が必要な特定技能外国人を受け入れられるよう図っていく。

→こちらは大都市圏のほうが給与水準が高いため、地方で人材不足が解消できないのではないか、という批判があったことへの対応かと思います。